地球温暖化は、みなで引き起こしたことだ。私たちは車をほしがり、旅行をしたがり、生活水準を向上させたいと願う。問題は、人びとがいま起こりつつあることに気づいたときには、すでに手遅れかもしれないということだ。
ビッグ・クエスチョンとは、人類が問い続けてきた根源的な問い、人類の未来や存続に関わる課題等、人類にとって重大かつ難問な問いのこと。そうした10の問いにホーキング博士が答えることでまとめられたのが本書。
亡くなる2年前の2016年11月には、1,000年後、そして、翌年にはその予測を大幅に短縮して、100年後に人類が滅亡するとコメントしたホーキング博士。
その手掛かりやヒントを探ろうと手にした本書。地球温暖化や気候変動への脅威とクリーンなエネルギーへの夢が語られていました。
本書で取り上げられた10のビッグ・クエスチョンとは、
- 神は存在するのか?
- 宇宙はどのように始まったのか?
- 宇宙には人間のほかにも知的生命が存在するのか?
- 未来を予言できることはできるのか?
- ブラックホールの内部には何があるのか?
- タイムトラベルは可能なのか?
- 人間は地球で生きていくべきなのか?
- 宇宙に植民地を建設するべきなのか?
- 人口知能は人間より賢くなるのか?
- より良い未来のために何ができるのか?
●地球温暖化は地球最大の脅威
ホーキング博士が私たちが住む惑星、地球最大の脅威として挙げるのが、7つ目の問いで語られる核戦争と地球温暖化。既に手遅れかもしれない地球に住み続けることは、人類絶滅の道を歩むかもしれないという衝撃的な内容でした。
小惑星の衝突が6,600年前に起こり恐竜が絶滅したことを踏まえ、
より差し迫った危機は、制御不能になった気候変動です。海洋の水温が上がれば氷冠が解け、大量の二酸化炭素が放出されるでしょう。どちらの(小惑星衝突と気候変動)現象も、地球の気候を金星のような気候 ー 摂氏462℃ととてつもない高温 ー にしかねません。
では、住めなくなる地球をどうするのか?
大航海時代にコロンブスが新大陸を目指した様に、地球がこの様な事態に陥っているのではあれば、人類は宇宙に飛び出し、新しい惑星を目指すべき、そして、人類が住む地球が一つの鳥かごであるとすれば、一つの鳥かごに卵を盛っておくべきではないとしています。
地球を見捨てるのかと思われそうですが、その反論には、以下のメッセージが私たちに投げかけられます。
私たちは、1997年に採択された国際的合意である京都議定書を超えてその先に進み、いますぐ炭素の放出量を削減しなければならない。そのためのテクノロジーはある。必要なのは政治的な意思だけなのだ。
世界じゅうのすべての人が、健康で安全な生活を送れるように機会を与えられ、愛に満たされるように力を合わせよう。人はみな、未来に向かってともに旅するタイムトラベラーだ。私たちが向かう未来を、誰も行きたいと思うようなあ未来にするために、力を合わせようではないか。
●人口知能が進化する未来の人間の役割
AIが進化する未来の社会に対しては、当然ながら正負両側面を持ち合わせているを指摘しています。その未来で人間が果たす役割とは、私たちが、AIはいかにあるべきかという議論の先に学習を進め、私たちがAIをどの様にするのか、確実に私たち人間が計画するようにしなければならないとしています。
火を使いはじめた人間は、何度も痛い目を見たのちに消火器を発明した。核兵器や合成生物学、強い人口知能といった、もっと強力なテクノロジーについては、あらかじめ計画を立てて最初からうまくいくようにしなければならない。なぜならそれは一度きりのチャンスになるかもしれないからだ。
博士の力強いメッセージを伝えるために、引用が多くなりましたが、知的好奇心を揺さぶる一冊となりました。地球温暖化問題、AIの進化、両者に共有して言えることは、未来のこの惑星の行く末の鍵は、今地球に住む私たち世代が握っているということ。
最後に、PC開発の父と呼ばれるアラン・ケイ氏のメッセージを。
「未来は予測するものではない。発明するものだ。」