わたしたち消費者は、自分たちが身近に使っている製品がどのような工程で生産されているのか、および、その工程において人権侵害にあたるような問題が起きていないかどうかを「知る権利」、そして「予防する権利」を持っています。
皆さんは、「フェアフォン」という取り組みを知っていますか?
もともとは、スマートフォンを製造するための鉱物資源のフェアな調達を目的に、2010年、オランダで立ち上がったキャンペーンのこと。
キャンペーンを通して、様々な声をスマートフォンメーカーに届ける活動をしてきましたが、いっこうに改善されず、キャンペーン立ち上げの中心人物自らが、フェアなスマートフォン作りを実現しようと設立したのが フェアフォン社。
フェアフォン社は、もともとのキャンペーンの目的やその社名の通り、原材料のフェアな調達から、製品のリユース、リサイクルの実現に加えて、製品の一部が壊れてしまった場合でも、自分で部品を交換できたり、部品交換の際の交換マニュアルを公開する取り組みを実現しています。
なかなか目にすることがない自社でスマホの交換用パーツ販売もしていますので、アクセスしてみて下さい。
さて、先日は、NPO法人 開発教育協会が主催するイベントで「スマホから考える 世界・わたし・SDGs」の体験ワークショップに参加してきましたが、その内容が大変素晴らしいものでした。そこで、今回は趣向を変えて、そのカリキュラムのレビューを紹介しましょう。
体験ワークショップで行われたプログラムは、こちらの教育教材をベースとしたもの。
教材の内容のざっくりした構成は、以下の通りで、
・携帯電話~スマートフォンの歴史
・スマートフォンの原材料調達から製品化までのサプライチェーン
・原材料調達段階での紛争鉱物問題
・製品製造段階での工場での人権問題
・スマートフォンから紐解くSDGsとわたしたちができること
これらの構成の中、様々なグループワークが組み込まれ、ワークショップが実践できるテキストになっています。
ここでは、後半の「工場での人権問題」の内容を紹介しましょう。
実際に中国の工場で起きていることを取材し、このスマートフォン製造が及ぼす人権問題のプログラムが作られたとの事。
ワークショップで行われたのは、参加者自らが、以下構図の登場人物になりきって起きている課題の解決を果たそうと討議を進めます。
ワークショップ当日は、6名で構成されるグループが5つあり、1グループの中で、一人ひとりが以下の役割に割り振られ議論が進みます。
・日本の消費者
・スマートフォン・メーカー
・中国政府
・製造工場幹部
・製造工場従業員
・国際人権NGO
当日の場を仕切るファシリテーターからは、今、起きている問題が提示されますが、その課題を6者の立場から議論を進めていきます。
先程述べた様に、ワークショップ当日は、こうしたグループが5つあるため、ワークショップの場には、同じ役割を担う参加者が5名いることになります。
各グルーブごとに、活発な議論が進みますが、ワークショップ参加者個人の感情や思いではなく、与えられた役割の立場から解決を図ろうとするため、当然ながら全員が納得する解決策のとりまとめには至りません。
そこでファシリテーターから同じ役割の5人がその役割ごとに集められ、作戦会議の場が設けられ、再度自分のグループに戻り、議論を進めるわけですが・・・
まさにこれといった正解がない問題に取り組む難しさ、国境や立場を超えたロールプレイでの議論の醍醐味。
きちんと作り込まれた教育プログラム、ワークショップ・カリキュラムってこういうものなんだと実感した、とても素晴らしいワークショップ体験となりました。
そして、ワークショップ体験を通して、タイトルに含まれる「SDGs」がただのお飾りではなく、その役割をきちんと果たしていることが体感できたこと。それは、「サプライチェーン全体を通した課題把握」の重要性、そして、「誰一人取り残さない」という、SDGsに取り組む際のポイントや基本理念がプログラムにも忠実に反映されていること。
公益財団法人 消費者教育支援センターの優秀な教材を表彰する場でも、2018年度 優秀賞に選ばれた本教材。本当に素晴らしい内容でした。
開発教育協会でも紹介されていた、スマートフォンを通して社会課題を知るための動画コンテンツも併せてご覧下さい。
●『スマホの真実―紛争鉱物と環境破壊とのつながり』紹介映像
●『10年間でつくられたスマホ、71億台!』
『ムクウェゲ医師の闘い ~なぜ、コンゴの悲劇は終わらないのか』
(ザ・フォーカス 2019年2月3日放送)
現在、日本では、毎年3,000万台以上が流通し、同等の数が廃棄されているスマートフォンと携帯電話。今、私たちに出来ることはなんだろうか?