「問題解決力」は今後、どんどん低価格化が進み、供給過剰の状況になる一方で、当の「問題」は見つけることが難しくなっています。このような社会にあっては、「問題を解ける人=オールドタイプ」よりも「問題を発見し、提起できる人=ニュータイプ」こそが評価されることになります。そして、そのためのカギとなるのが「社会や人間のあるべき姿を構想する力」だということになります。
今回は、その著者の最新刊「ニュータイプの時代~新時代を生き抜く24の思考・行動様式」を紹介しましょう。
ここで定義されるニュータイプとは、人材、つまり、従来の望ましい人材要件から、「今後の望ましい人材要件」のこと。
ビジネス書のカテゴリーの本書ではありますが、これからの時代、ヒトとしてどう生きるか?を問う、カオスな社会に適応した自己啓発書と言えます。
●メガトレンドを理解する
まず最初に挙げられるが、ニュータイプの人材が社会の要請としてある6つのメガトレンドが紹介されています。
1.飽和するモノと枯渇する意味
2.問題の希少化と正解のコモディティ化
3.クソ仕事の蔓延
4.社会のVUCA化
5.スケールメリットの消失
6.寿命の伸長と事業お短命化
正解のコモディティ化に関しては、前書
に書かれていたことですが、改めて、IBMのディープブルーやワトソンを例に解説を加えています。
・1997年:チェスの世界チャンピオンに勝ったディープブルーの翌年の販売価格は約1億円
→現在、量販店で売られている家庭用PCと同等程度
・2011年:ワトソンがアメリカのクイズ番組 ジャスパーでクイズ王に勝利
→当時1億円だとしてもムーアの法則に当てはめれば、その価値は近い将来100万円程度
こうしたテクノロジーの進化が進めば、将来、ソフトバンクのペッパーの様やロボットは、家庭に一台どころが、スマホの様に一人一台、もしかしたら、企業が販促用に無料で配布する様な社会になるかもしれません。
●「希少なもの」を目指す
そうした時間の到来により、例えば、現在の花形職業の一つであるデータサイエンティストもその役割が違ったものになるでしょう。
テクノロジーの価格の低下が進めば、正確に処理をして正確な解を求めることは、AIに任せて、何を課題として問いを立てることが重要となることは容易に予想できるでしょう。
これが、筆者が繰り返し述べる、ニュータイプに求められる「問題発見能力」や「意味」ということになります。
本書では、今の社会で「過剰なもの」と「希少なもの」の対比が掲載されていますが、需要と供給の市場原則の通り、「希少なもの」を生み出すことが求められるとしています。
本書より
このリスト一覧すれば結論は明白です。「過剰なもの」がことごとく「論理と理性」によって生み出されているのに対して、「希少なもの」はことごとく「直感と感性」によって生み出されています。つまり、現在の社会において「希少なもの」を生み出そうとするのであれば、「直感と感性」を駆動せざるを得ない、ということです。
●「意味がある」と「役に立つ」
本書を通して、納得感溢れる内容だったのが、縦軸が「役に立つ」で、横軸が「意味がある」のフレームワーク。
本書より
自動車メーカーを例にケーススタディが展開されますが、「役に立つ」はレッドオーシャンになりがちで、寡占化が進み、ごく少数の企業しか生き残れないこと。そして、「意味がある」の自動車メーカーの例として、フェラーリやランボルギーニを例として挙げられています。
自動車メーカーを例にケーススタディが展開されますが、「役に立つ」はレッドオーシャンになりがちで、寡占化が進み、ごく少数の企業しか生き残れないこと。そして、「意味がある」の自動車メーカーの例として、フェラーリやランボルギーニを例として挙げられています。
移動手段としは二人乗りで荷物を積むこともできない「役に立たない」車が日本車の10倍以上の値付けにも関わらず、何ヶ月ものバックオーダーを抱え、なぜ、中古車市場ではプレミア価格となるのか?
また、意味を追求するフレームワークとしては、あのサイモン・シネックが提唱したゴールデン・サークル同様、WHY・WHAT・HOWの話が展開されますが、アポロ計画のケネディ大統領とグーグルのゴールデン・サークルにより、分かりやすく解説されています。
サイモン・シネックの本WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う では、ライト兄弟でしたが、本書では、WHYと同様に内発的動機の重要性に触れ、南極点到達点レースでのアムンセム隊のエピソードが紹介されていました。
そして、この意味に関して、本書での興味深い発見の一つが、日本のLLCエアライン、ピーチのWHY。
本書では、著者がピーチの社長にインタビューした際のエピソードが紹介されていますが、ピーチのWebサイトを確認すると、フィソロピーのページに直接的ではありませんが、その一端が伺えました。ちょっとした感動を覚えます。
なぜ、ピーチはLLCとして事業をはじめたのか?ピーチのWHYは是非、本書で確認して下さい。
全体を通して、著者が提唱する新しい時代の人間像に加え、組織やキャリア構築、学習方法まで、その仮説をこれでもかという位、様々な事象や多くの過去の文献の引用により、を丁寧に検証し、説得力を持たせている本書。
進化の止めることのない人工知能の前に立ちすくんで「誰ば仕事を奪われるか」などという予測をして、その予測に振り回されても仕方がない。このように不毛な予測に時間と労力をかえ、出てきた予測に一喜一憂しているオールドタイプは環境変化に引きずり回され、人生のイニシアチブを失うことになるでしょう。一方で、進化するテクノロジーを用いることで、現在の社会が抱える課題をどのように解決できるかを考えるニュータイプは、環境変化を自らのチャンスに変えていくことで、大きな豊かさを生み出していくことになるでしょう。
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書) 同様、今年下半期 オススメ本の一冊になるでしょう。
ちなみに、山口周さんの本に出会ったきっかけは、数年前、この本を書店で手にとったこと。
外資系コンサルの知的生産術?プロだけが知る「99の心得」 (光文社新書)
コンパクトな新書ですが、ランダムに何度も読み返す機会の多い個人的なバイブルになってます。
※冒頭のタイトルは、吉田拓郎 デビュー曲「イメージの詩」歌詞の一節より引用

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