日本の次世代を担う子どもたちが、めまぐるしく変化していく環境や社会で生き残っていくためには、固定観念にとらわれず、クリエイティブに問題解決をしていく力が必要です。「本来のデザイン」をしていく上で必要な、社会を先読みする力、洞察力、柔軟性といった力を学ぶことが可能になり、どんな状況でもクリエイティブに解決していける人材の育成は、日本の豊かな未来につながることだと思います。
アメリカ コカ・コーラの新商品ブランディングやパッケージデザイン、MTV、国連等のアートディレクションを手掛け、世界的にも高い評価を得ている、ニューヨークで活躍する日本人アートディレクターが著した、
・グローバル・スタンダードのブランディング
・現時点におけるブランディングの世界潮流
を中心にまとめられた本書。
そして、タイトルにもある様に、本書を通して一貫しているのは、世界に通用するデザイン経営戦略として、日本の経営者が知って欲しいことを、世界的に活躍するアートディレクターの立場から危機感をもって伝えていること。
●日本人の考える「デザイン」とは、見た目の良さだけ?
まず述べられるが、日本人のデザインに対する誤解。
著者が定義する「デザインする」とは、
- クライアントをよく観察し
- 課題や問題点や強みを見極め
- オーディエンスや時代、市場を考慮し
- 問題解決する方法を柔軟にクリエイティブに考え出し
- それを可視化して伝わるかたちに落とし込んでいく
日本が捉えるデザインと言えば、見た目の造形やグラフィック・デザインを想像しがちですが、デザインとはあくまで問題解決の手段であるということ。
●ブランディングの観点からの世界の潮流
本書の中で、最も興味深かったのは、良いブランドの条件として挙げられる13項目のうち、近年重要視されている以下の4項目を挙げていること。
SOCIAL:社会貢献の要素がある
ENVIRONMENTAL:環境に優しい
GOVERNANCE:企業論理/ガバナンスがある
EMOTIONAL:感情を引き出す
著者が挙げる4点のうち、3点はESG(Environment・Social・Governance)に関連するもの。2019年4月にアップされた以下の記事によれば、ESG投資の市場は年々拡大しており、金融投資の世界とアートディレクターが考える重要なブランドの要素と符号する結果でした。
【金融】世界と日本のESG投資「GSIR 2018の結果」。日本のESG投資割合18.3%と大幅飛躍 | Sustainable Japan
そして、4つ目の要素が「感情を引き出す」こと。つまり、価格や機能面ではなく、情緒的価値を訴求するということでしょう。
いまの時代のブランドの流れとして非常に重要なのが、繋がりや共感。よって消費者の感情を引き出すことが重要になっています。ストーリーテリング、ナラティブ、戦略的コミュニケーションなどがキーワードとなっており、消費者の感情を引き出し、ブランドの思いに共感してもらい、消費者にブランドとの繋がりを感じてもらうことに力を入れています。
著者が関わったコカ・コーラのポスターやボトルのパッケージデザイン他、関わったブランドのクリエイティブの本書冒頭数ページに掲載されるカラー写真、是非、本書を手にとってご覧下さい。
※コカコーラボトル生誕100周年記念ポスターのデザインに関する、著者自らが発信する記事はこちらから。

ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと
- 作者: 小山田育,渡邊デルーカ瞳
- 出版社/メーカー: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
- 発売日: 2019/04/26
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